私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う

19

しばらくのあいだ、言葉もなく、ただお互いの温度を感じていた。
静かで、あたたかくて、心地よくて。
まだ何も終わっていないようで――
それでも、今はそばにいるだけで、十分だった。

「……ばあちゃんがさ」

ぽつりと野田が言った。
その声が不意に落ち着いた空気を揺らす。

私は胸の上に顔をのせていたけれど、ちょっとだけ顔を上げる。

「……?」

少し照れくさそうに笑いながら、彼が続ける。

「ばあちゃん、毎日うちの母さんに言ってるらしいんだ。早くひ孫が見たいって」
「…………!?」

一瞬で、私は顔が真っ赤になった。

「……な、なにそれ……っ」

「気に入られたみたいだよ? うちのばあちゃんにも」
そう言って、悪戯っぽく笑う野田の目は、どこか真剣で。
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