私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う

20

次の週末、私はまた野田の実家を訪れた。

車を降りた瞬間、玄関から勢いよくおばあちゃんが飛び出してくる。

「風花ちゃん!よく来たねぇ!」

「こんにちは、また来させてもらっちゃいました」

「うんうん、うちの子がうるさくてね、"次はいつ来るんだろうね"って毎日よ」

後ろからはお母さんも笑顔で現れて、嬉しそうに私に手を振った。

「前よりもっと、顔がやわらかくなったわね。いい顔してる」

私は照れくさくて笑ってしまう。
横にいた野田が、こっそり私の手を握ってきた。

「な?言っただろ。二人とも、おまえのこと大好きなんだよ」

「……うん、なんか、うれしい」

「今日は泊まりでいいよね?」
おばあちゃんの一言に、私は思わず野田を見た。

彼はニヤッとして、私の耳元でささやいた。

「今度は、洗濯機、鳴らさないようにする」

「ちょ、ちょっと!」

私の顔は真っ赤になったけど、笑い声がこぼれる。

再訪の実家は、あたたかくて、優しくて――
ちゃんと「帰ってきた」と思える場所だった。
< 66 / 74 >

この作品をシェア

pagetop