私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う
22
次の日の朝。
ふたりでたくさんのお土産を詰め込んで、車に乗り込んだ。
野田のお母さんとおばあちゃんは、何度も手を振って見送ってくれた。
私は助手席で、ゆっくりシートに背を預ける。
車が小さな町を抜けていくたびに、昨夜の記憶がふわりと蘇って、胸がくすぐったくなる。
「……なんかさ」
ハンドルを握る野田が、不意に言った。
「ここで仕事、探すのもいいかなって……ちょっとだけ思ってきてる」
私は驚いて、野田の横顔を見た。
「えっ、それって……」
「いや、すぐどうこうって話じゃないよ? でも、ああいう暮らしも悪くないなって思った。
家族がいて、あったかいご飯があって……夜は静かでさ。
隣に風花がいれば、それだけで充分って思えた」
その言葉に胸がぎゅうっとなった。
「……わたしも」
小さく、でもはっきり言った。
「東京の喧騒も、今の仕事も嫌いじゃないけど……
昨日みたいな夜を、これからも何度も重ねていけるなら……そういう場所も、いいなって思う」
野田の手がギュッとハンドルを握る。
「……マジでやばい、今の」
「え?」
「好きすぎて、ハンドル切り損ねそうになった」
私は思わず笑ってしまった。
でも、その笑いの奥に、泣きそうなくらいの温かいものがあった。
「風花、また行こう。ばあちゃん、絶対首長くして待ってる」
「うん。……次は、おばあちゃんに、なにか手料理作ってあげようかな」
「やば。惚れ直すわ」
静かな車内に、ふたりのやさしい笑い声が響いた。
東京まではまだ少し距離がある。
でも、私たちの未来は、少しずつ、確かに近づいている気がした。
ふたりでたくさんのお土産を詰め込んで、車に乗り込んだ。
野田のお母さんとおばあちゃんは、何度も手を振って見送ってくれた。
私は助手席で、ゆっくりシートに背を預ける。
車が小さな町を抜けていくたびに、昨夜の記憶がふわりと蘇って、胸がくすぐったくなる。
「……なんかさ」
ハンドルを握る野田が、不意に言った。
「ここで仕事、探すのもいいかなって……ちょっとだけ思ってきてる」
私は驚いて、野田の横顔を見た。
「えっ、それって……」
「いや、すぐどうこうって話じゃないよ? でも、ああいう暮らしも悪くないなって思った。
家族がいて、あったかいご飯があって……夜は静かでさ。
隣に風花がいれば、それだけで充分って思えた」
その言葉に胸がぎゅうっとなった。
「……わたしも」
小さく、でもはっきり言った。
「東京の喧騒も、今の仕事も嫌いじゃないけど……
昨日みたいな夜を、これからも何度も重ねていけるなら……そういう場所も、いいなって思う」
野田の手がギュッとハンドルを握る。
「……マジでやばい、今の」
「え?」
「好きすぎて、ハンドル切り損ねそうになった」
私は思わず笑ってしまった。
でも、その笑いの奥に、泣きそうなくらいの温かいものがあった。
「風花、また行こう。ばあちゃん、絶対首長くして待ってる」
「うん。……次は、おばあちゃんに、なにか手料理作ってあげようかな」
「やば。惚れ直すわ」
静かな車内に、ふたりのやさしい笑い声が響いた。
東京まではまだ少し距離がある。
でも、私たちの未来は、少しずつ、確かに近づいている気がした。