私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う

【おまけ】一番喜んでいたのは…

週末。
風花と野田は、久しぶりにふるさとの家を訪れた。
なんでもないふりをして玄関を開けたけど、風花の手は野田の袖をきゅっとつかんでいた。

「おかえりー!」
台所から出てきたお母さんと、庭で草むしりをしていたおばあちゃんが顔を出した。

「まぁまぁ、来るなら言ってくれたらよかったのに!」
「いいのいいの、来てくれたのが嬉しいんだから」

ぺちゃくちゃとにぎやかに迎え入れられ、二人は居間へ。
しばらく近況を話して、お茶を飲み終えたあと──

風花は、野田と目を合わせて、うなずいた。

「……あのね、おばあちゃん、お母さん」

ふたりがピタッと会話をやめて、風花を見つめた。

「私たち……赤ちゃん、できたの」

──一瞬、空気が止まった。

「えっ……ほんとに!?」
先に声を上げたのはお母さん。目をまんまるにして、思わず立ち上がった。

「ほんとに、ほんとに……!?」
今度はおばあちゃんが手を合わせて、目をうるうるさせながら言った。

「うん……病院で、ちゃんと診てもらった。まだ初期だけど、元気にしてるって」

そう言った瞬間──

「やだもう」
お母さんが泣きながら抱きついてきた。

「おめでとう、おめでとう……あんたたち、ほんとに……ああもう、嬉しいわあ……!」

「ひ孫……!」
おばあちゃんはと言えば、ぽろぽろ涙をこぼして、口元を押さえていた。

「……ばあちゃん、ひ孫が来るよ。夢、叶ったな」
野田がそっと言うと、おばあちゃんは頷いて、笑った。

「……こんなに、嬉しい日が来るなんてねぇ……」

「……でも!」とお母さんが急に立ち上がった。

「無理しちゃだめよ!?ちゃんと栄養とって、ストレスためないで、寝不足はだめよ?いい!? 風花、母親になるっていうのはね──」

「あー始まったな」
野田がこそっと耳元でささやく。

私は笑って、うん、と頷いた。

おばあちゃんも、お母さんも、泣いて笑って、何度も何度も「おめでとう」と言ってくれる。
──この家に、またひとつ、あたたかな命が迎えられる。

私は、幸せの重さを抱きしめながら、胸がじんわりと熱くなった。
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