御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました

第5章 復縁の要請

数日後の夜、ソファでくつろいでいた時だった。

テーブルの上に置かれていた律さんのスマホが、控えめに震えた。

「ん?」と律さんが手に取る。

何気なく聞いてみた。

「誰?」

すると律さんは、少し迷ってから私にスマホの画面を見せてきた。

「……涼花。」

表示されたそのメッセージには、短くこう書かれていた。

《最後に会いたい》

私はその文字をじっと見つめる。

「本当に、“最後”かな。」

そう呟くと、律さんはすぐに首を横に振った。

「いや、彼女の常套手段なんだ。“最後に”って言葉で引き止めて、その後も関係を続けようとする。……前もそうだった。」

淡々とした言い方だったが、その表情には少しだけ迷いも見える。

私は黙って律さんの顔を見つめた。

かつての彼女との関係。

一方的な想いだったと聞いたけど――それでも、やっぱり彼女は律さんを忘れられないのだろう。

そして私は、自分の胸の中にざらついた感情が湧いてくるのを感じていた。
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