御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました

第7章 初めての喧嘩と仲直り

しばらくして、律さんの帰りが遅くなることが続いた。

「取締役会議があるんだ。」

そう言って、ネクタイを緩めながらため息をつく彼の姿を見て、私はふと胸がきゅっとした。

取締役――それは、株式を名乗る会社ならどこでも通る道。

だけど本来、律さんのような若い部長が直接関与することはないはずだった。

「本来なら取締役じゃないから関係ないと思うんだけど、御曹司っていう立場だから、書類作成とか、会議の中身にも目を通さないといけなくて。」

律さんは淡々とそう話したけれど、その目は少しだけ疲れて見えた。

その瞬間、改めて私は気づかされた。

──律さんは、ただの優しい夫なんかじゃない。

彼は大企業・神楽木フォールディングスの御曹司であり、その名に恥じないように、日々努力し続けている人なんだ。

家では穏やかに笑い、私を甘やかしてくれるけれど、仕事の場では、それだけの重圧を背負っている。
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