御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました

第8章 遅れた新婚旅行

しばらくして、私たちは遅れていた新婚旅行に出かけていた。

向かった先は、青い空と透明な海が広がる南の島――絵葉書のような絶景に、私はすっかり浮かれていた。

「私、海外ってあまり来たことないんだよね。」

そんなことを言いながら、大人気なくはしゃぐ私を見て、律さんは少し照れたように笑った。

「それはよかった。思い切ってリゾートにして正解だった。」

「律さんは、海外けっこう来るの?」

「うーん……」と彼は少し考えてから、首を傾げた。

「俺の場合、ほとんど出張だから、リゾートには縁がなかったな。」

「……普通はそうだよね。」

私たちは手を繋いで、ホテルのすぐそばにある浜辺を歩いた。

柔らかい砂の感触が足の裏に心地よく、どこまでも続く水平線に心がほどけていく。

ふと視線を向けると、近くの岩陰で、欧米のカップルが軽くキスを交わしていた。

その光景に照れくさくなって、私は律さんの腕に軽く寄りかかった。
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