カンペキ王子は、少々独占欲強めです。

4

合宿一日目のスケジュールがすべて終わり、夜。
男子たちは福原の部屋に自然と集まり、修学旅行のような空気でわちゃわちゃ騒いでいた。

布団を敷く前の畳の上、ポテチとペットボトルが広がる輪の中。

「そういえばさー!」

福原が突然思い出したように声を上げた。

「今日、プレゼンの班移動のときさ。矢田を呼びに行ったんだよ、廊下のベンチにいたから」

「んで?」

「いたのよ、湯田中。すぐ隣に!」

「マジで!?」

「それも、なんか……いい雰囲気だったんだよな~。距離近いっていうか」

「え、付き合ってんの?」「初耳なんだけど!」「あの陸が!?」

盛り上がる男子たちの声にまぎれて、布団の端でスマホをいじっていた和樹が、ふと顔を上げる。

「……へー」

その一言は、どこか温度のない、低い声だった。

「え、なになに横尾、おまえ何か知ってんの?」

「いや。別に」

表情ひとつ変えず、和樹は再び視線をスマホに戻す。
けれどその目が、画面ではなくどこか遠くを見ているように見えたことに、
誰も気づかなかった。
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