カンペキ王子は、少々独占欲強めです。

27

気がついたとき、花乃は自分の身体の重さに小さく息をのんだ。
全身がだるくて、少し痛くて、でも――熱を帯びたような幸福感が、まだ体の奥に残っていた。

(……昨日のこと……)

まぶたを閉じれば、陸の熱、声、指先、すべてが鮮明によみがえる。
思い出した瞬間、顔が一気に赤くなった。

「……おはよう」

その声に、そっと目を開けると、陸の顔がすぐそこにあった。
自分の顔を覗き込んで、ふっと目尻を緩めて笑う。

その顔が――今までと、明らかに違っていた。
色っぽくて、やわらかくて、包み込むような甘さを帯びていて。
見ているだけで、また心臓が跳ねそうになる。

「……な、に……」

花乃がか細くつぶやくと、陸は低く笑った。

「いや、かわいいなって思って。
昨日よりずっと……女の子の顔してる」

「っ……!」

花乃は一気に顔を覆ってしまった。
でも、ドキドキは止まらない。むしろ胸の奥からとろけてくるような気持ちが広がっていく。

そんな花乃の様子に、陸もまた、静かに息をのんでいた。

――かわいすぎて、反則。

すこしだけ腫れぼったい瞼に、柔らかく乱れた髪。
薄紅に染まった頬に、ぽかんと開いた唇。

昨夜とはまた違う、色づいた花乃の顔が、陸の胸をまた一段と高鳴らせていた。

「……なに、その顔……」

花乃がぼそりと呟くと、陸は言った。

「……もう一回キスしていい?」

そう言われて、花乃は反射的に目を閉じてしまった。

そのまま、ふわりと優しいキスが、また重なった。

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