カンペキ王子は、少々独占欲強めです。

28

ホテルをあとにして、最寄駅へ向かう途中――
改札近くの商業施設で、ふと足を止めた。

シルバーアクセサリーのショップ。

ショーケースに並ぶリングのペアが、光を受けてきらりと輝いていた。

「ねえ、買わない?」

陸が、花乃の手を取って問いかける。
「お揃いの指輪。……買おう?」

花乃はきょとんとしたあと、頬を染めた。

「えっ、指輪……?」

「うん。ちゃんとマーキングしとかないと、また変な男に声かけられるかもしれないし」


軽く笑いながらも、その目はまっすぐだった。

「花乃、自分がどれだけ無防備か……ちょっと自覚してよ。
……せめて指輪してれば、牽制になるでしょ?」


指に通された、細いシルバーのリング。
可愛らしくて、でも存在感がある。

「……でも、そういう外向けの意味だけじゃなくてさ」

陸は指輪をはめた花乃の手を取って、もう一度囁いた。

「俺にも、ちゃんと分かるようにしてほしい。
花乃は俺のものだって……俺だけのって、ちゃんと、ね?」


花乃はただ頷いた。

指先に伝う銀の輪は、二人の気持ちをつなぐ約束の印だった。
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