カンペキ王子は、少々独占欲強めです。

2

湯田中陸は、すごかった。

成績は常に学年トップ。全国模試の上位常連。
運動神経も抜群で、どんな球技でも瞬時にコツを掴んでしまう。
それでいて、明るくて、人懐こくて、先生にも友達にも好かれていて。
なのに、どこか飄々としていて、努力をひけらかすようなところはまるでない。

――まるで、主人公みたいな人。

「天は二物を与えず」なんて言葉は、湯田中陸の前ではあまりに無力だ。
彼の前では、それがただの言い訳に思えてしまう。

県内有数の進学校。
その中でも“圧倒的な存在”として知られるのが、湯田中陸だった。

しかも、彼には双子の弟がいる。
同じくこの学校に通う、湯田中蓮。

二卵性の双子である彼らは、見た目も雰囲気も異なる。
蓮は静かで、あまり人と関わろうとしない。
どこか冷めたような目をしていて、感情を読み取りづらいタイプだった。

でも――
湯田中陸は違う。

彼は常に教室の中心にいた。
何気ない一言が笑いを生み、誰かが困っていればさりげなくフォローして、
まるで“みんなの太陽”のように、周囲を照らしていた。

……そしてなぜか、その光の一部が、花乃にも向けられることがある。

廊下ですれ違ったとき。
プリントを配っていたとき。
ほんの一瞬、視線が交わると――
湯田中陸は、必ず微笑んだ。

まるで、「ちゃんと見てるよ」とでも言うように。

(……変な人。私なんて、目立たないのに)

その笑顔は、あまりに自然で、あたたかくて――
心のどこかが、ほんの少しだけ、揺れた。

思い返す。
十歳の夏。
誰にも見られたくなかった涙にそっと寄り添ってくれた、あの言葉。

「僕が一生一緒にいるから、安心してね。ずっと想ってるから」

……覚えているのかな?
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