カンペキ王子は、少々独占欲強めです。

7

「留学するんだね」

花乃が、まっすぐに陸を見つめて言った。

陸はほんの一瞬だけ視線を逸らしてから、小さく頷いた。

「そう。まあ、あの高校に入学する前から、決まってたんだけどね」

事もなげに言うその声には、どこか張り詰めたような硬さがあった。

「どこへ?」

「イギリス」

「いつまで?」

「……2年かな」

ぽつぽつと交わされる言葉たちが、まるで雨粒のように静かに落ちていく。
花乃はそのたび、胸の奥がじんわりと重くなるのを感じていた。

言いたいことはたくさんあるはずなのに、言葉にすると、どれも足りなく思えた。

それでも、目の前にいる陸は──やっぱり、少しだけ遠く感じた。
< 24 / 115 >

この作品をシェア

pagetop