カンペキ王子は、少々独占欲強めです。

13

桜井先生が案内してくれた場所。
花乃はその玄関先に立って、思わず息をのんだ。

──3年前、あの日と同じ場所。
湯田中陸の家だった。

木の香りのする広い玄関。整然とした石畳。
少し高台にあるその家は、夜の街の光を見下ろしていた。

「……ここって……」

戸惑いを隠せずに花乃がつぶやくと、桜井先生はドアのチャイムを押しながら、やわらかく微笑んだ。

「楓に、連れてきてって頼まれたんだよ。」

カチリ、とドアが開いた。
その向こうにいたのは、パジャマ姿の楓だった。

「……はーなのっ!」

声をあげる楓が、満面の笑顔で花乃を抱きしめた。

「来てくれて、ありがとう。……ほんと、来てくれてよかった」

胸の奥が、じわっとあたたかくなる。
花乃は、ただ黙って楓の腕の中にいた。

その奥で、誰かの足音が静かに近づいてくる気配がしていた──。
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