カンペキ王子は、少々独占欲強めです。

3

合宿は、予想以上にハードだった。

朝は6時に起床、軽いランニングから始まり、
午前はグループディスカッション、午後は志望進路別の模擬授業。
夜には班ごとのプレゼン準備とリーダー発表、さらに小テストまであるという鬼スケジュール。

(……すごい、さすが進学校。やることが、えげつない……)

頭のいい人たちばかりの空間。
話すスピードも早くて、質問の質も鋭い。
花乃は、懸命についていこうと必死だった。

(……でも……ちょっと、しんどい)

夕食後のプレゼン準備中、目の前の資料がぼやけた。
眠気なのか、疲労なのか、ただの焦りか。

「……矢田、大丈夫?」

隣で同じ班だった男子が声をかけてくれたけれど、
「うん、大丈夫」と微笑んだ。

(大丈夫じゃないのに……)

そんな自分が悔しかった。

頭の中で、自分の声がする。

──“やっぱり、私なんかじゃレベルが違いすぎるのかも”

──“勉強、頑張ってきたつもりだったのに”

「……っ」

知らないうちに、ノートを握る手が震えていた。

「……花乃」

ふいに、後ろから呼ばれた。

振り返ると、そこには陸がいた。
班も違うし、席も遠いのに、なぜかすぐそばに立っていた。

「ちょっと、来て」

そう言って、強引でもなく、でも断れない雰囲気で、花乃の手首をそっと取った。

「え、あの、プレゼンの……」

「ちょっとだけ。……5分、貸して」

静かだけど、何かを察してる声だった。
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