カンペキ王子は、少々独占欲強めです。

22

いつものように、課題プリントを広げて、隣に座る花乃に教えていた陸。
ノートにささっと補足を書き加えたあと、ふいに言った。

「久美子さんから許可ももらったし……今度、旅行行かない?」

「……旅行?」

花乃はシャーペンを止めて、ちょっと驚いた顔で陸を見た。

「うん。せっかく夏休みだし。どこか行ってみようかなって。
温泉でもいいし、のんびりできるとこ」

「え……ほんとに? でも、いいの? 陸も色々、忙しいんじゃ……」

「忙しいけど、調整はできるよ。合間にリフレッシュするのも大事だし。
それに……ふたりで出かけてみたいし」

陸は花乃の頭を軽くぽん、と撫でる。

「行き先は、花乃が決めて」

「えっ、わたしが……?」

「うん。なんでも付き合う」

嬉しいような、くすぐったいような気持ちで、花乃は視線を落として頷いた。

「……じゃあ、ちゃんと考えておく」

「了解。楽しみにしてる」

小さな約束。
それだけで、二人の夏が、特別なものになる気がしていた。

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