カンペキ王子は、少々独占欲強めです。

23

午後、プールエリアへ向かうふたり。
更衣室で着替えたあと、花乃は鏡をみて呟いた。

「……恥ずかしい……」

楓と一緒に選んだ、ちょっと大胆な水着。
試着で見たときよりも、外に出た今のほうが、露出が多く感じられる。
特に下半身が気になって、思わず太ももを隠すように足を組む。

そのとき――

「……花乃、それ……生地、少なくない? とくに、下……」

低い声で、陸がぽつりと呟いた。
目は逸らしもせず、まっすぐに花乃を見つめてくる。

「えっ……そ、そうかな……?」

花乃がうろたえていると、陸は持っていた黒いラッシュガードを差し出した。

「これ。俺の。着てて」

「……え?」

「……他のやつらに、見られたくない」

きっぱりと、でも少し照れたような口調で言う陸に、花乃の心臓が跳ね上がる。

「……ありがとう、借りるね」

ラッシュガードを受け取って頭を通すと、ふんわりと陸の匂いがした。
ちょっと大きめで、すっぽりと体を覆ってくれる――でも、袖や足元からちらちらと肌が覗くのは変わらない。

「……ラッシュガード着てても可愛いけど。俺だけが見てたいって話」

陸がぼそっと、だけど意地っ張りな照れ笑いを浮かべて言った。
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