カンペキ王子は、少々独占欲強めです。

24

チェックインの時間になり、二人はプールを後にしてホテルへと向かった。

建物の外観からしてすでに大人びた雰囲気。
高級感あるエントランスを抜け、広々としたロビーで受付を済ませると、エレベーターで上階へ。

部屋のドアを開けた瞬間、ふわりと香る上質な香り。
重厚感のある家具に、落ち着いた照明。
非日常の静けさが、ふたりを包み込む。

「……すごい、素敵……」
花乃が小さく息を呑む。

そして——

「……あれ」

「ん?」

目線の先にあったのは、中央にどんと据えられた、ひとつの大きな——ダブルベッド。

ふたりの間に、ぴたりと沈黙が落ちた。

「……マジか」

陸がぽつりと呟く。

「え、えっと、わたし、ちゃんとツインって……って、あれ?」

花乃がスマホを取り出して予約画面を確認する。

「あっ……“デラックスダブルルーム”って……」

「……そっち選んでた?」

「え、うそ、間違えた……かも……」

花乃の頬が真っ赤になる。
さっきまで水に濡れていたのに、顔だけやけに熱を持っていた。

陸は、そんな花乃をちらりと見て、ふっと小さく笑う。

「……俺は、別にいいけど。花乃が嫌なら、フロントでベッド分けてもらえるか聞いてくる」

「……い、いやじゃないけど……!」

「ん?」

「……や、いやじゃないけど、なんか……こういうの、初めてだから」

花乃が目をそらしながら、もじもじと答える。

陸はそんな彼女に一歩近づき、優しく微笑んだ。

「じゃあ、無理しない程度に。今日は、ただ一緒にゆっくりしよう。……大事な花乃の、はじめての旅行だからね」

その言葉に、花乃はこくんと小さくうなずいた。
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