本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
第四章 夜会の夜は華やかに装って
アザレウスは、子供達の面倒を見ているリティスの様子を、少し離れたところから見ていた。

 彼にとって、女性とは警戒しなければならない存在だった。なにしろ、アザレウスは国王の弟である。

 イレクスが正式に王太子となったため、アザレウスが王位を継承する可能性は低くなった。考えたくはないが、イレクスに何かあったなら、セリカを未来の女王とし、アザレウスはそれを支えるつもりでいる。

 だが、王族という身分は、それだけで相手によっては魅力的に映るのだろう――縁談が持ち込まれることも、積極的な令嬢から迫られることもあった。

 時には、アザレウスと恋仲であると、ありもしない噂をばらまかれたこともある。噂の元凶には厳重に抗議させてもらった。以来、アザレウスに近づく女性はがくんと数を減らしている。その分、注意しなければならないことも増えたけれど。

 リティスと出会ったのは、魔物討伐に出かけた帰りのこと。ラングレーの近くだった。
 当初の予想ではさほど強い魔物は出没していないという話だった。

 だから、新人に実戦を経験させる場として選んだのだが――敵は想定以上に手ごわかった。
< 120 / 288 >

この作品をシェア

pagetop