孤高の総帥は初めての恋に溺れる

もう離さない

碧斗はサングラスをかけて前髪を下ろして
いたが、それでもその端正な顔は隠しようが
なくさっきの後輩達やまだまだ人が多い
国際線の出発ロビーを歩く女性の目を
くぎ付けにしている。

「碧斗さん腕を話してください。仕事をミス
って連れ去られていくみたいになってます」

「じゃあ手を繋いでもいい」

「ダメですよ」

「穂香が逃げていきそうだから…」

「逃げませんよ」

「本当に?」

穂香はうんうんと何度も首を縦に振った。

それで安心したのか、とりあえず腕は離して
くれたが、ぴったりと穂香に寄り添って
歩いている。

「碧斗さん近すぎ」

「うん?穂香が煩さすぎ」

そういって顔を見合わせて、二人同時に噴き
出した。

「もう、本当に強引なんだから」

「穂香はもう勤務は終わりなんだろう?
今日は遅番のA勤だから、ちゃんと
話したいからまずは退勤してきてくれると
ゆっくり話せるから、その方がいいんだ
けど」

「わかりました、じゃあすぐに着替えて
きますから」

穂香は観念してそう言うと碧斗は嬉しそうに
笑って

「じゃあ1階のA出口で待ってるから」

「そんな所で碧斗さんを待たせるわけには
いきません。ラッセルグループの総帥様
なんですから、どこかのカフェで待っていて
下さい。」

「そんな面倒だから、A出口で待ってる。
迎えの車にもすぐに乗れるし、早く着替えて
来て、さあ行って」

穂香は慌てて走って行って事務所で退勤処理
をして急いで更衣室に行って着替えた。
< 68 / 125 >

この作品をシェア

pagetop