皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~

第1章 誇りを奪われた日

私の名前は、セレフィーヌ・エストレア。歳は十八。

名門エストレア公爵家の一人娘として、幼い頃から厳しい教育を受けて育った。

遊び盛りの年頃。周囲のご令嬢たちが昼間から庭園でお茶を嗜み、恋バナに花を咲かせている頃──

私はダンスのステップを一つ間違えただけで、背筋に物差しを入れられ、

誰よりも早く起きては、この国の歴史や貴族礼儀作法を叩き込まれていた。

すべては、“皇太子妃になる”という運命のため。

それは誰に強いられたわけでもない。

誇り高い父──アードルフ・エストレア公爵の口癖は、こうだった。

「おまえが、未来の王妃だ。誰よりも気高く、誰よりも賢くあれ。」

小さな私は、その言葉を信じた。

“皇太子妃”という肩書きは、努力すれば手に入る未来だと。

私が努力すればするほど、殿下にふさわしい女に近づけるのだと──信じていた。
< 1 / 234 >

この作品をシェア

pagetop