皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~

第6章 すれ違う心、民意の重さに沈む

そしてついに、辞退したエミリアを除いた私とマリアンヌ皇女が、最終審査に臨むこととなった。

それは──王宮の正面、大広間にて行われる、民衆の前での「演説」。

王家の未来を担う妃候補として、何を思い、どのような国を目指すのか──

貴族や重臣、審査員の面々、そして大勢の民衆が見守る中で、自らの言葉を語らなければならない。

私の足元には深紅の絨毯が広がり、その先に見えるのは玉座と、その隣に座すアレシオ殿下。

彼の視線が、こちらへと向けられていた。

最初に壇上へ進んだのは、マリアンヌ皇女だった。

その姿は堂々としていて、ためらいなど一切見せない。

民衆の前に立つと、凛とした声が響き渡った。

「まずは、本日ここにお集まりいただいたすべての方々に、心より感謝申し上げます。」

淀みのない、完璧な口調だった。まるで生まれながらの王妃のように。

その瞬間、会場全体が彼女の存在感に包まれた。
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