皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~

第8章 新しい風の為に

そして私たちは、正式に王命により婚約を果たした。

「セラフィーヌ・エストレア。皇太子、アレシオ・ヴェルディナとの婚約を許す。」

荘厳な王の声が、王宮の大広間に響いた。

「……はい。」

私は一礼し、玉座の隣に立つアレシオ殿下と目を合わせた。

その瞬間、あたたかな何かが胸いっぱいに広がっていくのを感じた。

王妃様は目を細め、うんうんと微笑みながら頷いてくださった。

宣下が終わると、アレシオ殿下がゆっくりと私の前に歩み寄る。

まるで、これまでの距離を埋めるように。

「これでようやく、君は俺の婚約者だな。」

優しく、でもどこか誇らしげな笑みがこぼれる。

「ええ……長かったですね。」

私も思わず微笑む。

試験の日々も、別れの覚悟も、今はすべて祝福に変わっていた。

そのとき、近衛のドナルドが控えめに咳払いをした。

「殿下、セラフィーヌ様。……気を抜いていられませんよ? 婚約が決まったのですから、公務に邁進していただかないと。」
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