皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~

第9章 ざわめく宮廷と、揺るがぬ想い

しかし、恐れていたことが起きた。王宮に、民や一部貴族からの嘆願書が届いたのだ。

――「王族の婚約者には、然るべき血筋と立場の者がなるべきである。」

その文面は、明確に私への反対を示していた。

「皇太子殿下のお妃、つまり未来の王妃は、マリアンヌ皇女が相応しい。」

公募の結果を覆すような言葉が、王宮内を静かに、しかし確実に広がっていく。

王宮の書簡室に積まれていく嘆願書の束。

「庶民の声だと言っても、これでは……」

侍従の一人が憂いの表情で呟いた。

私は黙ってその場に立ち尽くした。

今までも身分の壁があった。

だが、愛があれば乗り越えられると信じていた。それなのに――。

王の表情は険しくなっていた。民意を無視することはできない。

それがこの国の伝統であり、王家の責務でもあるのだ。

アレシオ殿下はその声を知っているのだろうか。
< 221 / 234 >

この作品をシェア

pagetop