皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~

第2章 試練の扉

王宮の一角、大理石が敷き詰められた壮麗な大広間には、既に十人の令嬢が席についていた。

皆、事前の書類選考を通過した“選ばれし者”たち。

私はその中の一人として、整えられた机にペンを置き、静かに息を整えていた。

隣に座っているのは、あのエミリア・ロザリンド嬢だった。

黒髪を後ろで束ね、背筋をぴんと伸ばした姿勢に、一分の隙もない。

私は、少しだけ声をかけてみた。

「……緊張しないんですか?」

エミリア嬢は、ほんの少しだけこちらに顔を向ける。

「緊張しますよ。ただ……」

「ただ?」

「ここで落ちるようであれば、私はそもそも王妃の器ではなかったということです。」

その言葉に、私は思わず前を向いた。

彼女の言葉は、傲慢でも高慢でもなかった。

ただ事実として、自らにそう言い聞かせているような、揺るぎない覚悟だった。

試験官が入室し、試験の説明がなされる。
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