皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません～見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました～

第4章 ぶつかる理想と現実

そして、いよいよ最終候補に残った私たちは、次なる試練――模擬執務試験に臨むことになった。

会場となる講堂には、張り詰めた空気が漂っていた。

場に集まった貴族たちの視線も鋭く、皆、この試験に並々ならぬ関心を抱いているのが伝わってくる。

「試験内容は、あくまで仮定のものです。実際の執務とは異なりますが、臨機応変な対応力が問われます。」

試験官がそう告げると、候補者たちの表情が一層引き締まった。

私もまた、手のひらに汗を滲ませながら、胸の鼓動を抑えるように息を整える。

「最初に執務を行うのは……エミリア・ロザリンド嬢。」

試験官の声にざわめきが起こる。彼女は落ち着いた様子で立ち上がり、優雅に一礼した。

「公平さを期すため、模擬執務は実際の執務室にて、アレシオ殿下と一対一で行っていただきます。」

その言葉に、場が一瞬静まり返る。まさか本物の執務室で……？

「では、アレシオ殿下、エミリア嬢、こちらへ。」