売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます

第7章 公然とした結婚の意思

ある日、クライブが一枚の書類を私に差し出した。

「これが、君の経歴になる書類だ。」

受け取って見ると、そこには《アバーン伯爵家》の由緒と歴史、そして血統の正当性が細かく記されていた。

信じがたいほどに丁寧で、まるで貴族名鑑のようだった。

「……本当に、私の家が……こんなに立派だったの?」

声が震えた。
だって、私を売り飛ばそうとしたあの叔父が、「由緒ある家柄」として記されているのだ。

「アバーン伯爵家と婚姻関係を結ぶってことは、当然、そうなるさ。」

クライブはそう言うと、いたずらっぽくウィンクを寄こした。

「世間は“書かれたもの”で判断する。だから──俺が書かせた。君が胸を張って、この家の夫人になれるように。」

「クライブ……」

私の胸がじんわりと熱くなった。

“守る”とは、ただ傍にいることじゃない。

彼は、私の過去すらも塗り替えて、未来を差し出してくれようとしている──。
< 100 / 158 >

この作品をシェア

pagetop