売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます

第2章 冷たい優しさに、心が溶ける

「……本当に俺の物にするのか。今ここで試すんだろう?」

その一言が、最後の砦を粉々に砕いた。

私は──また、地獄に突き落とされた。

静まり返った空間の中で、クライブは何のためらいもなく上着を脱ぎ始めた。

そしてベストも外し、ゆっくりと時計のベルトを外す。

「……えっ……」

唖然とする私の前で、彼は淡々と服を整えていく。

まるでこれから商談でもするかのような、冷ややかな動作。

「ちょ、ちょっと……待って、本当に……ここで……?」

声が震えた。身体も震えていた。

そんな私を、クライブはちらりとも見ずに言った。

「おまえは……俺が“金で買った”女だ。……だったら、俺の好きにしてもいいだろう?」

──最低。
そう思った。
助けてくれる“光”なんて、やっぱり幻だったんだ。

私は、耐えきれずに手を上げた。

──ビンタの音が、部屋に響く。

男たちが小さくどよめいたその中で、クライブは表情を崩さなかった。
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