売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます

第3章 所有と名乗る愛の始まり

──翌朝。

ゆっくりと目を覚ますと、傍らにあるはずの温もりが消えていた。

「……クライブ?」

私はシーツを握ったまま身を起こし、あたりを見回した。

部屋には、私ひとりだけ。

昨夜の痕跡が、まだ静かに残っているのに──彼の姿はなかった。

不安に駆られながら寝室を出ようとしたそのとき、

廊下の奥から、男の声が聞こえてきた。

「……やってくれたな、クライブ。俺が買おうとしていた女を奪って、気分がいいか。」

その声──聞き覚えがある。

あのオークションの夜、1000という額で私を落とそうとした男。

たしか、クライブの“父親”──カーティス・オーセント。

私は息を潜めるようにして、壁際に立った。

「呆れた。」

クライブの声がした。

冷静で、それでもどこか怒りを含んだ口調だった。

「本気で……クラディアのことを抱こうとしていたんですか?」

しばしの沈黙。

そのあと、クライブが深く、重たいため息をつく音がした。
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