蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
第7話「番妃としての誓いと、二人の未来」
夕暮れが深まり、王宮の庭園には柔らかな茜色の光が広がっていた。
朱色の瓦屋根と白い柱が、まるで絵画のように静かに浮かび上がる。
祝宴の準備が整った華やかな広間の喧騒とは対照的に、庭園の奥には人影も少なく、ゆったりとした空気が流れている。
セレナは、白地に藍色の縁取りが入った控えめなドレスをまとい、心細さと誇らしさが入り混じる胸の鼓動を感じながら、歩みを進めていた。
(妃としての正式な承認をいただいても、心のどこかで自信が揺れている……。私に、本当にその資格があるのだろうか)
人々の期待を背負い、これから待ち受ける多くの試練を思うと、胸が締めつけられる。
けれど、そんな弱さは見せられない。
「……強くならなきゃ」
自分にそう言い聞かせ、ゆっくりと足を止めると、庭園の隅にある小さな石橋のたもとに、彼の姿が見えた。
アグレイス。
夫であり、守るべき“番”。
長く伸びた黒髪が夜風にそよぎ、彼の深い蒼い瞳は星のように澄んでいる。