蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜

第2話「絆を紡ぐ午後と、ふたりだけの時間」




 午後の柔らかな陽光が、王宮の庭園を優しく包み込んでいた。色とりどりの花々が風に揺れ、甘く芳しい香りがふんわりと漂う。小鳥のさえずりが空気に溶け込み、まるで時間まで穏やかに流れていくようだった。

 セレナは淡い水色のドレスをそっと揺らしながら、ゆっくりと歩いていた。外の世界の柔らかな光景が、胸の中のざわめきを少しずつ静めていく。彼女の心はまだ不安でいっぱいだったけれど、その中に確かな温もりが灯っていることを感じていた。


 (あの夜の誓いから、何かが変わった。怖さはまだ残っているけれど……もう、ひとりじゃない)


 彼女の瞳の奥には、微かな決意の光が宿っていた。自分を包み込む風の心地よさに、ほんの少しだけ微笑みがこぼれる。


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