蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
第2話「神獣の呼び声と揺れる心」
――『ようやく、見つけた』
あの夜、銀の月明かりの中で聞いた、誰の声でもない“声”。
朝が訪れても、セレナの胸の奥にはまだその余韻が残っていた。
熱でも、夢でもない。あの神獣の眼差しが、確かに自分を見ていたことだけは、はっきりと覚えている。
(あれは……夢じゃない。けれど……)
セレナは小さく息を吸い、鏡の中の自分を見つめた。
昨日までと何も変わらないはずの顔。けれど、その目には、何か静かな決意の光が宿っていた。
午前中、セレナは神殿に呼び出された。
王宮内の聖域とも呼ばれるその場所は、王家に仕える神官たちが管理する場所で、神託を受けるための場でもある。
神殿の奥で待っていたのは、神官長オルド師――温厚で知られる老神官だった。