蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
第4話「揺れる想いと、心の迷い」
朝の陽射しが、薄いレースのカーテンを通り抜けて、セレナの寝室に柔らかく注ぎ込む。
空は澄み渡り、窓の外では小鳥たちがさえずり始めた。
しかしその光景とは裏腹に、セレナの心は乱れに揺れていた。
ベッドの中でそっと目を開けると、隣で静かに眠るアグレイスの横顔が見えた。
その穏やかな寝顔に触れたいと手を伸ばすも、まだ怖さがどこかで彼女の動きを止めていた。
(本当に、私はここにいていいの?)
胸の奥からざわざわと湧き上がる不安が、まるで冷たい波のように押し寄せてくる。
王妃としての立場、宮廷での重圧、そして何より「番妃」としての自分。
それらが絡まり合い、彼女の心に影を落としていた。
過去の記憶がふと蘇る。
幼い頃の孤独。家族からも期待からも距離を置かれ、いつもひとりぼっちだった日々。
愛されたい、認められたいと願いながらも、それが叶わなかった切なさ。
それでもアグレイスの隣にいることで、少しだけ自分が変われるかもしれない、そんな淡い希望があった。
けれど、それだけでは足りない気もして、セレナは目を伏せてため息をついた。