蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜

第2話「民の声に触れて、心を知る」




 王都中央の広場には、朝から人の波が絶えなかった。
 野菜や穀物の価格が上がり続ける中、生活に苦しむ人々が、王宮に思いを届けようと自然と集まったのだった。

 人々の声は、叫びではなく、沈んだ嘆きに近い。


 「このままじゃ、冬を越せない……」
 「家族を養う米すら手に入らないなんて……」


 その中心に、ひときわ静かな存在が現れた。
 淡いグレーの外套に身を包み、肩を震わせながらもまっすぐ前を向いて歩く――セレナだった。


 「……あれは、お妃様?」

 「まさか、ご自身で……?」


 誰からともなくささやきが広がる。
 人々の視線が彼女に集まり、その空気の中を、セレナはゆっくりと歩み出た。


 「皆さんの声を、直接聞かせていただけますか?」


 凛と響く声。それは優しさと不安の入り混じる、生の声だった。


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