蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
第3話「誓いを越えて、共に進む」
王宮の会議室――重厚な天井装飾と静まり返る空気の中、十二名の貴族と役人がずらりと並び、中央に座るセレナを見つめていた。
「……妃殿下。突然、救済金の分配を議題に挙げられても、予算の裏付けがない以上――」
「民の不満は一過性のものです。慎重に様子を見るべきかと」
「広場に赴いたのはご立派でしたが、あれは“感情”であって、政治ではありません」
言葉は丁寧だが、いずれも冷たく、どこか彼女を見下していた。
セレナは静かに目を伏せ、胸の奥に押し寄せる悔しさを飲み込む。
言い返したい言葉はあった。
けれど、そのすべてが感情にすぎないと分かっていた。
だからこそ、息を深く吸い、心を整える。
「ならば、代案を出させていただきます」
その声は驚くほど静かで、だが澄んでいた。