蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
第5話「炎の決意と、未来への一歩」
夜の王宮。
燭台にともる灯りが、壁に揺れる影を落としていた。風は静かに吹き抜け、どこか不穏な気配が漂っている。
セレナは王の執務室にいた。アグレイスの隣で、静かに立っている。
対面するのは、先代から続く重鎮たち――王宮を陰で支配してきた古い貴族たちだ。
「妃殿下。そなたの即位以降、王宮内の序列に混乱が起きておる。新たな政策は急ぎすぎだ。民も戸惑っている」
「……改革の進行が遅れれば、民の信頼を失います。王妃として、私は王の意志を代弁し、前に進む覚悟です」
毅然としたセレナの声に、場の空気がぴたりと止まる。
かつての彼女なら、言葉に詰まり、戸惑っただろう。けれど今、彼女の瞳は揺れていない。
「その覚悟とやらが、火種になることもあるぞ」
言葉の鋭さは、あからさまな威圧だった。
だがそのとき、重厚な扉が再び開いた。