蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
第2話「祈りの灯と、新たな命」
戦いの終わった城下町には、まだ静かに煙がくすぶっていた。
瓦礫の山、焼け焦げた建物、倒れたままの旗印。
だがその中にも、人々の営みは、少しずつ息を吹き返していた。
アグレイスは王城の玉座の間ではなく、医務室の隣に設けられた臨時の執政室に身を置いていた。
片腕には包帯、額には浅い裂傷が残り、王の装束の代わりに血と土にまみれた軍服を着ている。
「この件の処理は、民間出身の医師たちにも協力を仰げ。薬草の供給が滞っているなら、南部の農村と協定を――」
乾いた声で次々と指示を出す彼に、侍従たちも返答を急ぐ。
セレナはその様子を扉の陰からそっと見守っていた。
(……あの人は、誰よりも先に動き始めてる)