蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
第3話「誓いの剣と、揺れる血」
――早朝。王宮の中庭。
夏の終わりを告げるような冷たい風が、セレナの髪をそっと揺らしていた。
純白のマントを羽織り、彼女は花の咲き残る小道をゆっくりと歩いていた。
お腹に手を添え、その動きを感じ取るたび、胸の奥に不思議な温もりが湧いてくる。
(この命は、たしかに私の中にいる。だけど……)
言葉にできない、かすかな不安が胸に絡まっていた。
最近、夜ごとに見る夢のせいだ。
――燃えさかる森。
――朽ちた祭壇。
――そして、何かに引き裂かれるような悲鳴。
目覚めたあと、指先にまで汗が滲んでいる。
アグレイスには言えないままだった。
(きっと、何かが……起ころうとしてる)