蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜

第6話「暁の誓いと、新たなる王国」




 夜明け前、王都を包む空は静かだった。
 重く閉ざされていた雲が少しずつ晴れ、東の空に微かな紅が差し始める。

 王宮の高台にあるバルコニーに、セレナは立っていた。
 その手には、先の神殿で託された新たな“契約の証”――再構築された魔印の石板が握られている。


 (この石板には、私たちの意志が刻まれている。過去の封印ではなく、未来への誓いが)


 足音が近づき、アグレイスが彼女の隣に立つ。
 夜明けの空を見つめるその瞳には、迷いの影がもうなかった。


 「今日、すべてが始まる」

 「……ええ、そして、終わる日でもあるわね。これまでの誤った王権の形が」


 ふたりの間に流れる空気は、静かで、強い。
 まるで風そのものが、ふたりを祝福するようにやわらかく通り抜けていく。

 王国では数日前より、異変が広まりつつあった。

 王家に伝わる守護結界が弱まり、各地の魔物封印にも不調の兆しが出ていたのだ。
 それは、古い契約の終焉が近づいている証でもあった。

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