蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
第4話「番の契りと揺れる夢」
王都の北、神域と呼ばれる霊峰《ルミアノス》。
人の手の及ばぬその地に、神獣と番の契りを結ぶための“儀式の間”は存在していた。
石造りの聖堂は、静かに月の光を受けて輝いている。
聖堂の中は、白銀に彩られた装飾と淡い光に満ち、まるで時が止まっているかのようだった。
セレナは、白の儀式衣に身を包み、その中央に立っていた。
緊張して胸が高鳴る。
けれど、隣にアグレイスの姿があるだけで、不思議と安心できた。
「怖くはないか?」
アグレイスが静かに尋ねる。
「……少しだけ。でも、あなたがいれば……大丈夫な気がします」
その言葉に、アグレイスは目を細めて微笑んだ。
神官による詠唱の後、二人は聖印を交わすために、互いの手を重ねた。
その瞬間――セレナの胸元に、淡く光る紋様が浮かび上がる。
それは、神獣に選ばれた者だけが宿す“蒼銀の印”。
神獣と心を繋ぐ、魂の契りの証だった。
ふわりと風が吹き、聖堂の中に銀の花びらのような光が舞い散る。
まるで、星が降るような――幻想的な光景。
その中央で、二人は静かに見つめ合った。