蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
第5話「静かなる誓いと、新たなる一歩」
神域の朝は、深く冴えわたっていた。
聖堂の前を彩る朝露に濡れた小径。山霧がゆっくりと溶けていき、柔らかな日差しが石床を温め始める。
儀式の余韻はまだ心に残っていたが、それ以上に、胸に新たな決意が宿っていた。
セレナはアグレイスとともに、神域を後にする準備をしていた。
離宮の前庭。
装飾を剥ぎ取られた、飾り気のない石畳の上。
支度を整えたセレナが、静かに立っている。
アグレイスは彼女の隣で支度を確認しながら、そっと手を握った。
「そなたは……もう、誰よりも強い」
その言葉に、セレナは微笑んだ。
「あなたが信じてくれたから、私も自分を信じられるんです」
二人が王都へ戻る馬車に乗り込むと、民たちの柔かな視線が集まった。
王女として、そして“神獣の番”としての初めての帰還。
通りを埋め尽くす群衆は、静かに拍手を送り、花びらを散らす。
セレナの胸が、小さく震えた。