蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
第2章
第1話「はじまりの朝と、銀の神殿」
白い朝霧が、静かに神殿を包んでいた。
セレナは、寝台の上でゆっくりと瞼を開けた。
深い眠りから目覚めた体は、まだどこか夢の中にいるようで。
柔らかく肌を撫でる陽の光と、ほのかに香るハーブの香りに、心がゆっくりと現実へと戻っていく。
「……ここは」
昨日までの王宮とはまるで違う。
天蓋付きのベッドも、調度品もすべてが落ち着いた色彩で整えられていた。
まるで雪の中にある静かな祠のような、凛とした空気。
――ここが、私の新しい居場所。
神獣アグレイスの番として、正式に神殿へと迎えられた彼女は、今日からこの地で“暮らす”ことになる。
箱入りで育った自分に務まるのか、不安がまったくないわけではない。
それでも昨日、アグレイスが手を取って言ってくれた言葉が、今も胸の奥で灯のように揺れている。
『――永遠にでも。』
その優しさと熱が、セレナの体を内側から温めてくれていた。