蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
第3話「風の試練と、守りたいもの」
神殿の朝は、どこかざわついていた。
清らかな空気の中に、かすかに緊張感が漂う。
セレナは、神殿の司薬官・ナリエルから急ぎ呼ばれ、薬草庫へ向かっていた。
「セレナさま、申し訳ありません! 弟子が中で……倒れていて」
「え……! 怪我人がいるんですか?」
「はい。中で誤って蒸留薬を倒してしまったようで……気を失っています。毒性は弱いですが……」
言い終える前に、セレナはためらいなく中へ駆け出していた。
まだ慣れない香や薬草の匂いが混ざる庫内。
薬壺が割れ、床には蒸気がたちこめていた。