蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
第4話「揺れる風と、重なる鼓動」
夏の終わりを思わせる風が、神殿の庭に吹き抜けていた。
木々の葉がさらさらと鳴る音が、遠い鈴のように響いている。
セレナは、薬草の手入れをしながら、そっと目を細めた。
穏やかな日々。
けれど、心のどこかに、小さな波紋が揺れている。
(……あの人たちの視線)
神殿の女官たちの一部が、自分のことをひそやかに見ているのを、セレナは感じていた。
以前のような露骨な敵意ではない。
けれど、敬意とも違う。
まるで、「見定める」ような目。
(私が、アグレイスさまの“番”だから……?)
そう思うと、胸がきゅうっと縮むようだった。