蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
第2話「番妃としての覚悟」
花嫁教育――それは、王の番妃にふさわしい品位・教養・精神性を身につけるための特別課程。
宮廷の慣習により、正式な承認の前に“内密に課される”ものだった。
セレナは今、その試練の只中にいた。
「スープの匙は、右から。飲み終えるときは音を立てず、唇で軽く拭いましょう」
食事の作法。
「相手がどれほど高位でも、目線を落としすぎないこと。礼節は下からではなく、まっすぐに」
挨拶と姿勢。
「花々の名と花言葉は最低三百種を。……王妃たるもの、言葉の裏にある意味を見抜くことも大切です」
貴族社会の符号。
侍女長ルチアの言葉は厳しいが、誠実だった。
「……王都の風は、甘くありません。覚悟して進みなさいませ、セレナ様」
「……はい」
セレナは何度も何度も、口の中で返事を繰り返した。
自分を偽らず、けれど幼さに逃げず――そんな日々が続いた。