結婚願望ゼロのエリート心臓外科医に勢いでプロポーズしたら、なぜか溺愛夫になりました
守れなかった約束
 それから5日後の夕刻、ドレスアップした鈴菜は悠磨と都内の高級ホテルを訪れていた。

 バンケットルーム前のサイネージには〝葛西一郎教授著書出版記念パーティ〟と表示されている。

 受付を済ませた悠磨と並んで会場に足を進める。豪華なシャンデリアが煌めく会場内はとても広く、人の多さに圧倒された。
 葛西教授や来賓の挨拶のあと、立食形式での歓談の時間となった。

 このパーティには応際大学医学部や、付属病院の関係者など数多くの人が招待されているらしい。

(悠磨さんの妻として粗相のないように振舞わなきゃ)

 談笑している招待客を横目にギュッとバッグを掴んでいると、悠磨の大きな掌が背中にそっと添えられた。

「別に緊張する必要はない。なにか軽くつまんで、タイミングをみて葛西教授に挨拶しにいこう」

「はい」

 優しく声を掛けられ、鈴菜はホッと息をつく。

(そうだ、無理をしすぎるのをやめようって決めたんだ)
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