結婚願望ゼロのエリート心臓外科医に勢いでプロポーズしたら、なぜか溺愛夫になりました
エピローグ
「マスター、こんにちは」

「いらっしゃい。待ってたよ」

 子気味よいドアベルの音を聞きながら店内に入ると、純也が笑顔で迎えてくれた。

 今日と明日めずらしくふたりの連休が重なったので、鈴菜は悠磨と連れ立ってムーンリット・アリーを訪れた。

 開店直後の早い時間なのでまだ他の客はいない、悠磨はいつもの定位置であるカウンターの奥の席、鈴菜はその隣に座る。

 純也は三人分のジンリッキーを作り、自らもグラスを持った。

「ふたりのこれからに乾杯」

「ありがとう」

「ありがとうございます」

 純也が笑顔でグラスを上げたので悠磨と共に鈴菜も倣う。

 藤田夫妻の結婚式から既に二週間。自分たちがこの先も夫婦として生きていくと決めたことは悠磨から純也に伝えてあった。

「鈴菜ちゃん会社で大変な思いしたんだって?」

「はい、そうなんです」

 純也に問われて鈴菜は苦笑した。

 藤田夫妻の結婚指を持ち出し鈴菜に罪を着せようとしていた土谷だが、彼は他にも不正行為をしていた。
 支配人の指示で社内調査が行われた結果、お客様に契約金を現金で持ってこさせて一部を横領していた件も明らかになった。
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