結婚願望ゼロのエリート心臓外科医に勢いでプロポーズしたら、なぜか溺愛夫になりました
できない相談
「本日は私たちの結婚披露宴にお越しいただき、誠にありがとうございます。皆様方の温かいご祝福のもと、こちらの式場におきまして、無事に結婚式を執り行うことができました」

 壇上でウェルカムスピーチを始めた新郎。隣に立つかわいらしい新婦は純白のウェディングドレスに身を包み輝くばかりの笑顔を浮かべていた。

 とある十一月の佳き日。広い披露宴会場は新郎新婦の幸せそうな表情と、ふたりを祝福しようと集まった招待客の温かな空気に包まれていた。

(このおめでたい空間で、どん底な気分なのはきっと私だけね……)

 平松(ひらまつ)鈴菜は、晴れやかな場にそぐわない暗い感情に支配されていた。

 鈴菜はウェディングプランナーだ。都内を中心にいくつものホテルやゲストハウス、レストランなどを展開する業界大手の企業に就職し、東京都内にあるゲストハウス『メゾン・ド・リュネ』に配属されて7年目になる。

 仕事上、結婚式や披露宴は数えきれないほど見てきたが、今日はスタッフではなく新郎の同僚として、いつもの制服ではなく結婚式用の華やかなドレスを着用しゲストの立場で列席している。

 新郎のスピーチが続く。
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