結婚願望ゼロのエリート心臓外科医に勢いでプロポーズしたら、なぜか溺愛夫になりました
この上なく幸せな結婚式
「わぁ、すごいお似合いです!」

 広い衣装室に璃子の高い声が響く。

「こんな改まった服装は着る機会がないので、緊張してしまいますね」

 フィッティングスペースのカーテンを開けて出てきた悠磨は、黒いタキシード姿で困ったような笑みを浮かべていた。

 ここは、メゾン・ド・リュネのウエディングサロン。鈴菜の勤め先でもあるが、今日は休暇で、スタッフとしてではなく、このゲストハウスで式を挙げるカップルとしてとしてここに来ていた。今日は新郎の衣装選びだ。

「本当にすごく着こなしてらっしゃいます! 背が高くてほどよく筋肉がついているから、礼服が抜群に着映えますね。いろいろ着てもらいたくなっちゃうわ」

 目を輝かせているのは衣装室担当の女性、木原だ。この道二十年以上のベテランでもテンションがあがるのも無理はないほどに悠磨の着こなしは完璧だった。

(このままレッドカーペットを歩いたら、映画俳優に見えるわね)

 鈴菜は心の中でなんともいえない気持ちになっていた。

 そのあとも木原と璃子は次々と衣装を運んでくる。悠磨は文句も言わず勧められるまま試着していった。

(本当に、どれも似合うなぁ)
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