婚活!~絶対幸せになれる婚、探してます~
第六章 甘やかな合理主義者
私と聖澤さんが華村に着く頃にはすっかり日が暮れていた。宿はちょうど夕食どきで、女将さんは慌ただしく宿泊客をもてなしている。
この時間に話を聞くのも迷惑なので、手が空くまで客室をひとつ借りて待たせてもらうことになった。
「お待たせして申し訳ありません。ご夕食をお持ちいたしましたので、どうぞお召し上がりください」
そう言って仲居さんが持ってきてくれたのは豪華な海鮮丼と野菜の天ぷら、そしてお吸い物だ。
「わ、おいしそう! 突然お伺いしたのに、お気遣いいただいてすみません」
「とんでもない。賄い程度でしたらご用意できますので」
「これが賄いなら、ここで働きたいくらいです。ですよね、聖澤さん?」
「ええ。本当に見事なお料理で驚きました。これは板長が?」
褒めながらも、すかさず探りを入れる抜け目のなさが聖澤さんらしい。
そんな魂胆を知るよしもない仲居さんは、「いえ、賄いに関しては脇板が」と朗らかに答えた。
板長の補佐をする脇板と呼ばれる料理人がひとりいると、事前に女将さんからも聞かされていた。
「脇板の方も料理がとてもお上手なんですね」