婚活!~絶対幸せになれる婚、探してます~
第三章 上向きな彼女
『聖澤さんはいっぱい魅力を持っているので』

彼女の言葉をきっかけに苦い過去が蘇ってきて、勝手に表情が歪んだ。

今ここにいる自分は、恋愛や結婚を切り捨てて得た成果の上に成り立っている。

そこに女性を惹きつける魅力なんてあるはずがない。あってたまるか。

かつて大切だと思っていた人を幸せにできなかった、ともに歩む道を拒んだ自分が、今さら恋愛や結婚に興味を抱く権利などない。



桃代さんに振り回された一週間後。美作さんに『相互評価の結果について振り返りがしたい』とミーティングスペースに呼び出された。

桃代さんも一緒かと思いきや、呼び出されたのは俺ひとりのようで嫌な予感がする。

「で、どうだった?」

アイドルスマイルのしたたかな男に詰め寄られ、俺は深く椅子にもたれて手脚を組む。

どうもなにも、酷い目に遭った。

相互評価システムはまったく使い物にならなかった。

その上、彼女に振り回され、落とし物――正確には彼女のものではなかったが――を届けに奔走したり、チンピラ相手にはったりをかましたり、街中を走ったり。普段は縁のないことだらけだった。

彼女は無自覚なトラブルメイカーだ。

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